これまでのメーリングリストでやりとりされた議題の中から選りすぐって記載します。
太陽系の元になったガスや塵の出所はどこ?
Q:太陽系の元になったガスや塵の出所どこなんでしょうか。
あちこちのそんなものが寄せ集まったのでしょうか、
現在星が生まれつつあるというオリオン星雲を見ると、
(その星雲ができた背景を本で読むと)、
そんなものかなァという気になります。
(私のからだは結局ゴミの寄せ集めか?)
A:いわゆるオリオン星雲(M42)は直径35〜40光年と見積もられていますが、
星間ガスはオリオン座全体に広がっており半径数百光年にわたる広大な
星雲を構成しています。三ツ星もリゲルもこの大星雲で生まれました。
星間ガスの99.9%(個数比)はビッグバンの際に作られた水素とヘリウムです。
その他0.1%は、炭素も酸素も金銀ウランも、全て星で作られたものです。
核融合プロセスで作られるわけですが、ヘリウム3個合体してできる炭素
の合成はとりわけ重要です(ヘリウム2個は核融合できない)。
炭素の更なる核融合が他の全ての合成に繋がると云う理由の故です。
ヘリウム3個合体の条件は非常に微妙で、炭素原子核のある特定の
励起状態の存在が必要です。炭素がなければ他の元素もなく人間もいない
と云う理由で、ホイルはそのような励起状態を予言し、その後実験で
確かめられました。「人間原理」の適用の唯一ともいえる成功例です。
我が太陽では、あと40-50億年で中心温度2億度に達し炭素合成が始まります。
星で合成された元素は超新星爆発と共に星間ガスに戻ります。
星間ガスが再び収縮して星になる、超新星爆発はそのトリガーの
役割を果たすとも云われています。
我々は星の子ども、超新星は我々の故郷、なんですよね。
それでも、ゴミの寄せ集めと思いますか?
中性子星ができる過程は?
Q:実はここがパルサーについてお話した中で最も困った部分でした、
もし質問されたら死んだフリをしようと考えていた部分です。
(爆発すれば何もかも吹っ飛ぶはずでしょ?
なのにどうして中心に塊ができる?しかも硬く押しつぶされて。)
A:この疑問はすごく本質をついていると思います。
私も見てきたわけではないのですが、次のように云われています。
(8-20)倍太陽質量の星の最終段階でそれ以上核融合できない
コアが形成されます。例えば20倍のベテルギウスであれば
鉄(原子核)のコアが出来ているはずです。
ベテルギウスは「まもなく」と言われていますが、最後の瞬間
コアは一気に中心に向かって崩壊、中心部は圧縮されて
中性子物質の固まりが形成されます。次にコアの外側の物質が
中性子物質に向かって加速落下して衝突する結果、衝撃波が
発生して外層部に伝搬し星の大部分を吹き飛ばしてしまう。
こういうシナリオはコンピュータシミュレーションで確かめられるわけ
ですが、実際に爆発させるのはなかなか難しい最先端の話題です。
*この説明で、ひとつ重要なポイントを落としました。
全て物質は陽子、中性子、電子で出来ています。
核融合を終えた星のコア部分が重力崩壊(爆縮)することで中心部が強く
圧縮されることによって、陽子と電子が反応して中性子とニュートリノに変わる、
つまり中性子ばっかりになるわけですが(これはβ線を出す放射能の逆プロセス)、
中心部の爆縮で発生した大量のニュートリノ(超新星爆発のエネルギーの99%)
は星を通り抜けて、爆発の光よりも数時間早く到達します。その発見が
小柴博士のノーベル賞になったわけです。
通過するニュートリノの一部が星の大部分を吹き飛ばす衝撃波の「後押し」をします。
これなしには衝撃波が減衰するために超新星爆発には至りません。
人間原理について
Q:カーターの強い人間原理は聞いたときは驚きました。
改めてどんな内容だったか調べましたが分かりません、
ある本の孫引きですが
「宇宙は人間を生むためにデザインされた」
「宇宙は自分自身を観察してくれる存在を求めるからだ」
という事のようですが、間違っているでしょうか?
聞くは一時の恥知らぬは末代までの恥といいます。
上記で間違いがあればどうかご指摘をお願いしますし、
また補足があれ補足をお願いするしだいです。
A:とりあえず、「超弦理論を語る会」に関係する部分にのみコメントします。
「強い人間原理」の言い方はそういう風だったかと思います。
もし我々の宇宙が唯一無二であったら、それはある種の目的論で、
多くの科学者が忌み嫌うものになります。
人間が存在するためにこの宇宙はあまりにうまく出来過ぎています。
目的論は結局はその理由を神に求めることになります。
一方、超弦理論はなんと10の500乗個もの異なる宇宙の存在可能性を
与えます。そんなにあれば、こんな出来過ぎの宇宙だってあるだろう、
我々はたまたまそこに居合わせただけ。つまり、「強い人間原理」もまた
ただの観測選択効果になってしまうということです。
以上のようなこと、最近出版された青木薫さんの
「宇宙はなぜこのような宇宙なのか---人間原理と宇宙論」
という本に詳しく書かれています。著名な宇宙論学者の口述筆記
で作った本が多々あるなかで、翻訳家として有名な青木さんが
しっかり文献を踏まえて書いたことがよく分かります。
Q2: 「強い人間原理に対する」素朴な疑問と言うことにでもなるのでしょうか、
以下シロートのたわごととお聞きください。
宇宙が10の500乗個もあるのなら我々の宇宙のように
微妙な物理定数の宇宙が1個ぐらい存在してもおかしくないだろう?
我々はたまたまその宇宙に生まれただけ。
人間に宇宙を認識させるというのなら人間に対してもっと考慮があっていいはずだ
@平均回帰の法則と言うのがあるそうで天才の子は普通の子になる
(例外はあると思いますが、でも三代以上続いて天才と言うのはないのでは?)
A親が獲得した知識は子に遺伝しない
もし@、Aが無ければ人類の宇宙に対する認識は飛躍的に伸びたはず
(もう宇宙のすべてを知っていてもおかしく無い時期だ?)
生物は種の保存と言うのでしょうか、驚くべきことをやっています。
たった一つだけ例を挙げますが
「他の昆虫の糞そっくりに擬態した昆虫(Fとします)が居る」、
自然は(宇宙はと言ってもよいかも)実に驚くべきこをやります、
糞など見向きもされないから安全だよとどうやってFに教え、
そしてどうやってFを糞そっくりの体にしてやったのでしょうか。
これに比較すると人間に対して配慮が無さ過ぎるように思えます。
一方オワンクラゲのGFPでノーベル賞をとられた下村博士
の経歴?を知ったとき
「偶然に偶然が重なり更にまた偶然が・・・・・・
まるで天が(天とは何かは脇に置いときます)博士を導いたようだ」と驚きました。
実際に下村博士も講演の最後にそのような意味のことをおっしゃっておられました。
また、アインシュタインも教授に疎んじられようやく特許局という暇がたくさんある?
職に就かなければ相対性理論は生まれなかったかも
(もっともじきに誰かが発見しただろうと言う話も聞きましたが)。
やはり多少は人間に配慮してるのかも?
青木さんの本を読んでも私の頭はあっちへウロウロこっちへウロウロしております。
物理学はチョッとかじっただけ、生物学はゼロすれすれの知識しか無い私ですから、
ご批判ご指導は覚悟しております(^^)
よろしくお願いいたします。
(私の頭が回転するのは1日24時間のうち夜中の一瞬だけ、
だからこのメールも回転停止寸前の状態、
考えていることが十分お伝えできたか疑わしいところがあります)
A2:古来、人間は「この世」と「あの世」よいう観念を持ってきました。
科学の力によって「この世」は「この宇宙」になりました。
けれど「あの宇宙」はやはり「あの世」、そこまで科学が及ぶかも
危ぶまれます。おそらく狭義の実証科学を超える何かが必要でしょうね。
ヒトは科学を創りだしました。不思議です。ただ個体保存と種の保存の
本能に従って生存するだけならそれは必要ありません。
大脳の進化がもたらした偶然の産物なんでしょうか。
獲得形質が遺伝しないことはダーウィン進化論の根本です。
しかしヒトの大脳は、遺伝子を通じてでなく、教育というプロセスで
科学を継承・発展させることを可能ならしめました。
科学はヒトという種が共有する自立的に発展する認識であり、
「この宇宙」が創りだした自己認識の仕組なのだと思います。